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【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜90年代編〜

 2016/10/09 DJ講座 日本語ラップ
この記事は約 10 分で読めます。 5,600 Views

 

90年代編

(前回の続き)

90年代に入ると、80年代のパイオニア達の影響を受けた数多くのアーティストが頭角を現すようになります。

アンダーグラウンドシーンでは都内のクラブイベントを拠点に、

現在でも有名な重要アーティストが活動を開始し、その創造力や技術力を競い合う様になります。

日本語ラップの技術は格段に進化し、広がりを見せます。

また、メジャーシーンではヒットチャートにランクインする楽曲がいくつも登場し、お茶の間にも日本語ラップが浸透していくようになりました。

日本語でラップをする、という技法の教科書はこの時代に一先ず完成されたといえるでしょう。

 

90年前半~90年半ば

数多くのアーティストに影響を与えた先駆者としてはMicrophone Pagerが有名です。

前回の記事でも紹介したKRUSH POSSEのMUROやDJ GOがメンバーに名を連ねており、

所謂ホコ天派の流れを汲んだアーティストといえるでしょう。

 

更に、Microphone PagerのメンバーでもあるTWIGY擁する雷は、

当時のハードコアでシリアスな作風のアーティストの中でもその筆頭として活躍します。

また、フリースタイル(即興ラップ)の始祖ともいわれ高い技術力を持つクルーFG CREWからは、

RHYMESTERがよりナードで文化的なスタイルで活躍します。

 

そして、海外から帰国したKing Giddraはアンダーグラウンドシーンの中でも中立的な視点から、

日本語でのライミング(押韻)を完璧な形で確立させたとして評価されています。

同じく海外からの逆輸入組ではBUDDHA BRANDが独自の言語感覚を用いた新しいスタイルで

日本語ラップに新たな価値観をもたらし、シーンの可能性を広げます。

 

この様に、個性的で高いスキルを持つアーティストが、都内のクラブイベントという狭い空間の中で共存し合っていたというのが当時の大きな特徴であり、

ラジオや雑誌等の数少ないメディアを通して熱狂的なファンを増やしていきました。

 

king-giddra

(KING GIDDRA)

 

 

rhymester日本語ラップ

(RHYMESTER)

 

 

buddha-brand日本語ラップ

(BUDDHA BRAND)

 

 

soul-scream日本語ラップ

(SOUL SCREAM)

※知的で繊細な作風が特徴。当時の“文系B-BOY”からの人気を一手に担った。

 

MASS対CORE

出展Youtube.com

(当時の盛り上がりが伝わる貴重な映像です。)

 

対するメジャーシーンではEast Endやスチャダラパーが、大々的にラップをフィーチャーした楽曲をヒットチャート上位にランクインさせます。

また、m.c.A・Tやバブルガム・ブラザーズ、久保田利伸などブラックミュージックの影響を強く取り入れたアーティストがこの時代に人気を博したことも、

後に日本語ラップが一般層でも広く受け入れられる土壌を築いた一因であると考えられます。

scadarapar日本語ラップ

(スチャダラパー)

 

 

さんぴんCAMP以降

96年に日本語ラップのシーンは大きな転機を迎えます。

その大きなきっかけとなった出来事がECD(80年代後半よりシーンを引率するアーティスト)主導による大型HIPHOPイベント『さんぴんCAMP』の開催です。

これまでクラブイベントでの活動を主としていたアンダーグラウンドシーンのアーティストが一同に会し、

昼間の日比谷野外音楽堂という大きなステージでのパフォーマンスを成功させます。

そして、その模様がビデオ化、リリースされたことでその影響力は都内だけでなく全国へと広がることとなり、日本中に大きな影響を与えます。

更に、その1週間後には同じ場所でスチャダラパー主催のイベント『大LB祭』も開催され、日本語ラップシーンは1つの大きな山を迎えることとなりました。

 

j-hiphoprap日本語ラップ

 

 

※【J-HIPHOP vs. J-RAPの対立】

当時、アンダーグラウンドシーンで活動するアーティストは、メジャーシーンで活動するアーティストを仮想敵とし、攻撃的な姿勢をとったり、そのような発言をすることも多くあったようです。

「アンチJ-RAPここに宣言 / ECD」

(楽曲『MASS対CORE / ECD feat. TWIGY, YOU THE ROCK★』)

「J-RAPは死んだ。俺が殺した / ECD」「次の週の小鳥とは違うリアルな面子 / DEV LARGE」

(『さんぴんCAMP』ステージ上にて)

これは、おそらくHIPHOPという輸入文化を日本に於いてどう解釈するかという点で、当時リスナーの考え方が二極化されたからではないかと考えられます。

全体的にアンダーグラウンドのアーティスト達はアメリカのHIPHOPに対し“直訳的”なアプローチを試みる傾向にあったといえます。

ストリートや現場と結びついたハードコアなリリックや、不穏でヒリヒリとした感覚を与えるようなシリアスなトラックを用いた攻撃的な姿勢を売りにしたアーティストが目立っていました。

それに対し、メジャーのアーティスト達はアメリカのHIPHOPに対し“意訳的”なアプローチを試みる傾向にあったといえます。

こちらは日常的なトピックをコミカルに扱ったリリックや、メロディアスなトラックを使ったキャッチーな姿勢を売りにしたアーティストが目立っていました。

(あくまで、“傾向が強かった。”“目立っていた。”というだけの話であり、はっきりと二極化されていたという事ではありません。)

 

現在では、アーティスト以上にリスナー側がこの対立を強く煽っていたのでは無いかとも言われています。

現にアンダーグラウンドの殆どのアーティストが後に、当時のメジャーアーティストを認める発言をしていたり、楽曲で共演したりもしています。

しかしながら、日本に於けるHIPHOPの聡明期ともいわれる90年代、

この様な対立構造がリスナー達に一体感や結束力を強く感じさせる火種の1つとして機能していたと考えて間違いは無いでしょう。

 

90年代前半の代表的な楽曲

『Rapperz Are Danger / Microphone Pager』

『夜ジェット / 雷』

『大掃除 / King Giddra feat. T.A.K. the Rhymehead』

『B-BOYイズム / RHYMESTER』

『証言 / LAMP EYE feat. RINO, YOU THE ROCK★, G.K.MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, GAMA, DEV-LARGE』

『人間発電所 / BUDDHA BRAND』

『MASS対CORE / ECD feat. TWIGY, YOU THE ROCK★』

『蜂と蝶 / SOUL SCREAM』

『今夜はブギーバック / スチャダラパー feat.小沢建二』

『DA.YO.NE / East End×YURI』

 

 

90年代前半の代表的なアーティスト

Microphone Pager

ECD

ZINGI

KING GIDDRA

RHYMESTER

BUDDHA BRAND

SOUL SCREAM

SHAKKAZOMBIE

スチャダラパー

 

 

『Rapperz Are Danger / Microphone Pager』

 

 

『証言 / LAMP EYE feat. RINO, YOU THE ROCK★, G.K.MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, GAMA, DEV-LARGE』

 

 

『口からでまかせ / RHYMESTER feat. KING GIDDRA, SOUL SCREAM』

 

 

『見まわそう/ KING GIDDRA』

 

 

『耳ヲ貸スベキ / RHYMESTER』

 

 

『人間発電所 / BUDDHA BRAND』

 

 

『サマージャム’95 / スチャダラパー』

出展Youtube.com

 

※取り上げさせていただいたアーティストや人物の敬称は統一して省略させていただいております。

また文中での順番も不同、もしくは時系列を基準とさせていただいております。

主観や個人的な嗜好には依らず、飽くまで客観的、中立的な視点から書かせていただけるよう努めました。

 

 

続きの記事も是非ご覧ください。

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜00年代編(前半)〜

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜00年代編(前半)〜

 

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜00年代編(後半)〜

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜00年代編 (後半)〜

 

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜現代編〜

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜現代編〜

 

 

前回の記事も是非ご覧ください。

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜80年代編〜

【ヒップホップ備忘録】日本語ラップの歴史〜80年代編〜

 

この記事を書いた人


 

funkyikeda

DJ FUNKY☆池田

10代の頃よりDJ活動を開始。

これまで関西を中心に大小問わず様々なイベントに出演、または自らそれらを企画。

豊富な知識と独自のキャリアの中で培われた鋭いセンス、楽曲の持つグルーヴ感やルーツの魅力を最大限に引き出す独自のMIXスタイルは多方面からの高い支持を得ており、その個性を武器に様々なフロアを演出し続けるPARTY DJである。

また、持ち前の選曲の幅広さを生かすべく大規模なクラブイベントでのプレイとは別に、一晩を通してラウンジスタイルのロングセットを披露する『FUNKY LOUNGE』を実施。2009年の祇園祭の日に開催されたスペシャル企画では25時間のロングセットを成功させた。

更に、2010年からは同タイトルとなる『FUNKY LOUNGE』シリーズを皮切りに多数のMIX CDを全国に向けてリリース。 (全作品、全国大手レコードショップを中心に発売中)。

関西を代表するsinger『歩』ボーカルユニット『FUNK ON HIP』LIVE DJ。

2014年、『DJ’s SUMMIT MIX CD CONTEST』全国8位入賞。

現在も多数のレギュラーイベントにてPARTYの要となるDJを務める傍ら、他府県でのゲスト出演や、CLUB DJ教室のインストラクター等、その活動は多岐に渡る。

 

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関西のクラブを中心にDJとして活動中。
幅広い知識と経験に裏打ちされたセンス、楽曲の持つグルーヴ感やルーツの魅力を最大限に引き出す独自のプレイスタイルで支持を得る。
大小問わず多数のレギュラーイベントにてPARTYの要となるDJを務める傍ら、MIX CDのリリースやクラブDJのインストラクター、他府県でのゲスト出演等その活動は多岐に渡る。

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